「それとも、もっと根本からの補修を行う必要がある?」
「長期間の通行止めや架け直しが必要になる?」
橋梁の維持管理において、こうして判断に迷うケースは少なくありません。
特に、過去に補修を行っている橋梁ほど、その対応が適切だったのか不安を感じる場面もあるのではないでしょうか。
以下のような条件に心当たりがある場合、表面の補修だけでは不十分な可能性があります。
・過去にひび割れ注入や表面補修を行っている
・補修後も漏水やひび割れが再発している
・通行止めや架け替えが現実的に難しい立地条件にある

本記事では、そうした条件・お悩みを抱えた維持管理担当者の方に向けて、 IPH工法を用いた橋梁補修工事の施工事例をご紹介します!
症状だけでなく、劣化の原因を踏まえた工法選定の判断プロセスも含めて解説します。
01. 雨漏り、ひび割れ…補修前の橋梁の状況&劣化原因|ビフォー
都内某所のこの橋梁では、コンクリート製の床版全体にひび割れやジャンカ(※)が発生し、一部で漏水も確認されていました。
※コンクリートが十分に詰まらず、内部に空隙ができた部分


これらのひび割れは、コンクリートの乾燥収縮や温度変化、長年の交通荷重などが重なって発生したものと考えられます。
特に本橋梁では、過去の補修履歴と漏水の再発状況から、
表面上のひび割れだけでなく、コンクリート内部に劣化が進行している可能性が高いと判断しました。

過去には注入補修による対応が行われていましたが、劣化の進行は止まらず、耐久性の面で課題が残る状態です…。
この橋梁は交通量が多く、橋を破壊して架け直すような大規模な工事は現実的ではありません。
既存の構造を活かしたまま、耐久性を向上させる補修が求められていました。
02. IPH工法の概要と橋梁のひび割れ補修に採用した理由
橋梁のひび割れ補修には、注入工法や表面被覆、防水工法など、さまざまな方法があります。
- 初期段階のひび割れで再発が見られない
- 内部調査で空隙やひび割れの内部連結が確認されない
といった状況では表面補修が有効です。
しかし、今回のように
- 過去に補修歴がある
- ひび割れや漏水が再発している
といった状況では、表面補修だけでは十分な効果が得られない可能性があります。
そこで、内部まで補修できる工法として、「IPH工法」を検討しました。
IPH工法は、コンクリート内部のひび割れや空隙に樹脂を充填し、コンクリートの健全性を回復させる補修工法です。

最大の特長は、コンクリート内部を負圧状態にして樹脂を充填することで0.01mmレベルの微細な隙間も補修可能な点にあります。

また、劣化の進行要因となる水や空気の通り道そのものを遮断できるため、鉄筋の錆びを防ぎ、耐久性を向上させる効果も期待できます。

IPH工法では斫りや解体を行わずに施工できるため、非破壊での補修が可能です。
建造物を造り直す必要が無いため、工期短縮やコスト削減にも繋がります。
一般的な低圧注入工法は、主に目に見えるひび割れを対象とした補修方法です。
一方、IPH工法は、樹脂を低圧で充填することで、ひび割れの奥や内部の空隙まで補修できる点が大きく異なります。
一般的な低圧注入工法→表面のひび割れを補修する工法
IPH工法→コンクリート内部まで補修する工法
ここで改めて本工事における条件や課題を整理しましょう。


本工事では、橋梁の劣化状況や過去の補修履歴などを踏まえ、発注・設計側の検討によりIPH工法が採用されました。

また、山陽工業はIPH工法の施工実績が豊富であり、その技術力を評価いただき施工を担当しました。
本事例ではIPH工法が採用されましたが、
・床版の断面欠損が大きい場合
・鉄筋腐食が広範囲に進行している場合
・構造的耐力そのものが不足している場合
には、部分打替えや架け替えを検討する必要があります。
工法選定は、「どれが優れているか」ではなく、「どれが橋梁の状態に合っているか」が重要です。
山陽工業でも、橋梁の状態を確認したうえで、必要な補修方法をご提案しています。
ご相談・現場調査・お見積もりはすべて無料で対応しておりますので、補修方法でお悩みの方は、お気軽にご相談ください!
03. 【施工事例】IPH工法による橋梁のひび割れ補修
ここからは、実際にIPH工法を用いて行った橋梁補修工事の施工事例をご紹介します。
施工前にはトモグラフィ解析を実施し、コンクリート内部の状態を確認しています。
トモグラフィ解析とは、コンクリート表面を鉄球で叩いてその振動を計測し、内部の空隙や劣化状況を非破壊で確認できる検査方法です。
今回は5mmおよび20mmの鉄球を用いて、内部のひび割れや空隙の深さを把握しました。
検査結果をもとに、樹脂を充填する位置や範囲をマーキングしました。
補修が必要な箇所を明確にすることで、無駄のない施工を行います。

ひび割れ調査のマーキング完了後、穿孔(せんこう)位置のマーキングへ移行します。

基本は20cm間隔で設定しています。
ひび割れが特に集中している箇所については、10cm間隔に設定。
樹脂がコンクリート内部のすみずみまで行き渡るよう、劣化の状況に合わせて穿孔の間隔も調整しています。
穿孔作業では、ミストダイヤセットを使用して穴あけを行いました。
ミストダイヤセットは、穿孔時に発生する粉じんを抑えながら作業できる機材で、周囲への影響を最小限に抑えつつ、安定した施工が可能です。

マーキングした位置に穿孔を行い、注入口を設けます。
必要最小限の穿孔とすることで、既存構造への影響を抑えています。

穿孔部に注入用の台座を取り付けます。
この台座を通して、コンクリート内部へ樹脂を注入していきます。
台座の取り付けに使用している材料は、「剥離シール」というシーリング材です。
通常の建物に使用するシーリング材よりも剥がしやすいことが特徴です。

また、台座周辺やひび割れ部にモルタルを塗布し、目止め処理を行いました。
これは、樹脂漏れを防ぎ、コンクリート内部へ確実に樹脂を充填するための重要な工程です。
この工程を省くと、樹脂が表面に逃げ、内部に十分充填できません。
今回は細かなひび割れが多いため、床版全体に目止めを実施しています。

台座設置面やひび割れ部分から樹脂が漏れ出す可能性があるため、壁・梁・床面に養生を施し、周囲を汚さないよう配慮しました。

コンクリート内部を負圧状態にし、設置した台座から樹脂を充填します。

充填が完了したら、そのまま24時間以上硬化させます。

注入完了後、台座を撤去し、穿孔部をモルタルで丁寧に穴埋めします。


穴埋め後は塗装を行いました。補修後の仕上がりに配慮した工程です。

施工後にもトモグラフィ解析を実施し、ひび割れ内部に樹脂が行き渡っていることを数値上の改善で確認しました。

橋梁補修は、劣化を「新品の状態に戻す」工事ではありません。
進行している劣化を抑え、内部の状態を安定させることが目的です。
だからこそ、施工後も検査で状態を確認することが重要になります!
04. IPH工法によるひび割れ補修後の橋梁|アフター
補修前の床版下面では、コンクリート表面に多数のひび割れや劣化が確認され、過去の補修跡も含め、長年にわたって傷みが進行している状態でした。
IPH工法による補修後は、表面が均一に仕上がり、
内部まで樹脂が行き渡ることで、床版全体の健全性回復が期待できる状態となっています。

見た目が改善されただけでなく、
ひび割れや空隙といった劣化の原因そのものに対して対策を行った点が、今回の補修工事の大きな特長です。


既存構造を活かしながら、橋梁の耐久性向上と長寿命化を図る補修が出来ました!
05. IPH工法による橋梁のひび割れ補修は山陽工業にお任せください!
橋梁補修では、「補修か、架け替えか?」といった極端な判断になりがちです。
ですが実際には、既存構造を活かしながら、どう長く使うかという視点が重要になります。
今回採用したIPH工法は万能ではありませんが、橋梁の状態によっては、非破壊で耐久性を高める有効な選択肢となります。

・表面補修で本当に足りるのか分からない
・過去の補修判断が正しかったか確認したい
・架け替え以外の選択肢を知りたい
こうした判断段階でのご相談だけでも問題ありません。

現地調査・ご相談・お見積もりは無料で対応しておりますので、橋梁補修でお悩みの際は、お気軽にご相談ください!


この記事を書いた人 山陽工業 しほ
・2025入社の新人営業部
・広報として現場取材で得た情報や、施工の魅力をお届けします!




