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コンクリート診断士が解説|軍艦島で検証するコンクリート補修材料の耐久性

修繕工事を検討する際、「この材料は本当に長持ちするのか」と気になる管理組合・マンションオーナーの方へ。山陽工業が東京理科大学と共同で軍艦島で続ける曝露試験。補修材料の耐久性や研究成果、現場でどのように活かされているのかをコンクリート診断士が詳しく解説します。

「この材料、本当に長持ちするの?」

修繕工事は決して安い買い物ではありません。

建物の修繕を提案するとき、山陽工業がこだわっているのが実環境でのデータです。
カタログ上のスペックだけでなく、実際の環境でどう劣化するかを検証することで、お客様により根拠のある提案ができると考えています。

そのために2019年から続けているのが、長崎・軍艦島での曝露試験です。

東京理科大学と共同で、コンクリート試験体を島に設置。年2回、特別な許可を経て上陸し、試験体の経過を記録しています。

今回は軍艦島での曝露試験について、その最新レポートをお届けします!

01. 建物の長寿命化を支える実環境データ

軍艦島といえば世界文化遺産としても有名ですが、山陽工業が注目したのは建物にとって極めて過酷な環境という点です。

軍艦島は常に潮風・雨・台風にさらされる環境です。この環境では、本土であれば数十年かけて進行する劣化現象が、より短期間で顕在化します。

これはつまり、軍艦島での曝露試験は「劣化を早送りで見られる環境」として機能するということです!

通常であれば長期間かけないと分からない材料の耐久性を、短い期間で実証できます。
どの塗料・仕様が本当に長持ちするかを検証する場として、これ以上ない環境です。

02. 曝露試験の現場へ|試験体の劣化状況

山陽工業が軍艦島で行っている曝露試験は大きく2種類です。

コンクリート試験体


内部に鉄筋を入れて人工的にひび割れを起こしたコンクリートの共通試験体を補修。
さらに種類の異なる仕上げ用塗料でコーティングしたもの。
錆汁の発生量やひび割れの状態から、塗料・仕様ごとの耐久性を比較しています。
塗料試験体


ポリウレアなどの塗料や防水材や新材料など、種類の異なる塗料を下地に塗布したもの。
塗料ごとの劣化挙動を実環境で確認しています。

2024年の試験体設置時点と比較すると、わずか2年で塗膜の劣化・錆の広がりが大幅に進行していることが確認できます。
設置当初は白くきれいな状態だった試験体が、潮風や雨にさらされ続けることでここまで変化しました。

(上)2024年設置時 (下)2026年調査時
ステンレス板と鉄板に塗布した塗材の経年変化を比較

塗料・仕様によってその進行度には差があり、どの仕様が過酷な環境に強いかが、データとして蓄積されてきています。

続いて、「実際どのような材料比較を行っているのか」「研究がどのように実際の施工に活かされているのか」をお伝えします。

今回は山陽工業在籍のコンクリート診断士に、現地写真をもとに詳しく解説してもらいました!

03. コンクリート診断士に聞いてみた|研究成果と現場への活用

コンクリート診断士 Yさん

2013年に山陽工業に入社、2020年にコンクリート診断士の資格を取得。
コンクリートを修繕・再生する新たな技術の実現を目指し、長崎県の軍艦島にて東京理科大学と共同研究を行っている。

コンクリート診断士とは?

日本コンクリート工学会が実施する試験に合格した専門家で、合格率は15%前後の高難易度資格です。
コンクリートの劣化原因を診断し、最適な補修方法を提案できる、いわばコンクリートのお医者さんです!

(1)軍艦島での試験体について
この錆汁の量・状態から、内部の鉄筋はどのくらい腐食が進んでいると判断できますか?

こちらはひび割れを補修した上に、ガラス塗料やフッ素を塗布したコンクリート試験体です。

どの試験体も錆汁が表面に滲み出ている時点で、内部の鉄筋にはすでに腐食が始まっていると判断できます。錆汁の量が多いほど、腐食の進行も進んでいると考えてください。

塗膜が劣化した試験体の内部は、錆でまっ茶色の状態です。
塗膜が水分の浸入をどれだけ防げるかが、そのまま内部の腐食の進み方に直結しています。

内部の鉄筋を守る塗膜の重要性を改めて実感しました…!

軍艦島は通常環境と比べて、何倍のスピードで劣化が進行すると考えられますか?

コンクリートの劣化は温度・湿度・塩分など様々な要因が重なって進むため、「何倍」とひと言では言えません。
実務では「鉄筋が錆び始めるまでどのくらいかかるか」で評価するのが一般的ですね。
内陸部では50〜100年もつ構造物が、海岸沿いでは10〜30年で補修が必要になるケースもあります。

(2)研究の意義について
コンクリート診断士の視点から見て、この研究で特に注目しているポイントはどこですか?

「水分の浸入をどれだけ防げるのか」——これがコンクリートの耐久性における永遠のテーマです。
水を弾く含浸材やコーティング材など、どの材料がどういった環境で長持ちするかを実環境で検証しています。

特に注目しているのが新材料の検証です。
この新材料はステンレスに対しても高い接着性を維持できるという珍しい特性を持っており、経過や強度を観察しています。

(上)2024年設置時 (下)2026年調査時
ステンレス板と鉄板に塗布した新材料の経年変化を比較

左手前3枚が鉄板、右奥3枚がステンレス板。
この試験では、新材料がステンレスという難接着素材に対して長期間接着し続けられるかどうかを検証しています。

現時点では表面のざらつきも健全に保たれていますが、引き続き経過を追っていきます。

7年分のデータを見てきて、特に印象に残っている変化はありますか?

ポリウレアが予想以上に早く変化したことには驚きました。
塩分の影響かもしれませんね。

(上)2022春 (下)2022秋

端部まで均一に塗ることや塗膜の厚みなど、施工品質が劣化速度に大きく影響することも、実物の試験体を見て改めて実感しました。

カタログ上のスペックを信じすぎずに実際の劣化も受け止め、下地や材料との組み合わせを考えることが大切。それが経験値になっていきます!

大学との共同研究だからこそできること、単独ではできないことはありますか?

大学には私たちが知らない材料や試験の知識が集まっています。
情報交換の中で「こういうものもあるよ」と派生的に新しい技術を知ることができる。
専門の研究室とコミュニケーションを取れることで、技術の新しいバトンがつながっていく感覚があります。

誰もやっていないことに取り組んでいる、という感覚が研究を続ける原動力になっています。

(3)現場への活用について
この研究結果を、実際のお客様への提案にどう活かしていますか?

実環境のデータがあるからこそ、『この材料はこういう環境で強い』と自信を持って提案できます。
メーカーとも情報を共有しながら、お客様にとってのベストを一緒に追いかけています。

「もっといい方法があるなら試してみよう」という姿勢が基本にあります!
知識としての経験値が積み上がることで、コストや工期も含めた最適な選択肢をお客様に提示できるようになります。

今後この研究をさらに現場に活かすために、取り組んでいることはありますか?

「建物の長寿命化といえば山陽工業」、それが今の目指すところです。

曝露試験と並行して、2025年からは軍艦島内の建物を使った試験も始まりました。

山陽工業が現在特に力を入れているのが、コンクリート補修工法「IPH工法」です。

IPH工法は比較的新しい技術なので、施工直後の性能だけでなく、「補修後にどのような変化が起こるのか」「長期間にわたって性能を維持できるのか」という実環境でのデータは、まだ十分に蓄積されているとは言えません。

そこで軍艦島という環境を活用し、コンクリート内部の密度を非破壊で可視化する「トモグラフィ解析」と組み合わせながら、補修前後の状態変化を継続的に検証しています。

この研究では、梁や柱の剥落防止を目的としたIPH施工が10年先まで維持できるのか、また劣化の兆候がどのように現れるのかを追跡していきます。

実環境で得られた長期データを蓄積することで、IPH工法の可能性をさらに明確にし、お客様へより根拠のある提案につなげていくことが私たちの目標です!

▼IPH工法・トモグラフィ解析についてはこちら

04. 研究で得た知見をコンクリート補修の現場へ

軍艦島で得られたデータは社内で共有し、お客様への提案に反映しています。

「どの塗料・仕様が実環境でどう劣化するか」を実証データとして持っているからこそ、根拠のある修繕提案が可能になります。これが、山陽工業が根拠ある修繕提案を大切にする理由です。

大学との共同研究を通じて、今後も建物の長寿命化に向けた取り組みを続けていきます!

コンクリートの劣化でお困りの方、修繕をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。
現地の状況を確認したうえで、最適な補修方法をご提案いたします。

この記事を書いた人 山陽工業 しほ

・2025入社の新人営業部
・広報として現場取材で得た情報や、施工の魅力をお届けします!

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